自然排卵周期の胚移植決定で、LHのみを指標にすると排卵日推定がずれる可能性あり

排卵日により胚移植を決定する際、LHを指標にすると、胚移植の最適なタイミングを外す可能性があるのではないかという報告をご紹介いたします。


Reproductive Biology and Endocrinology 2023 21:47


 凍結胚移植(FET)において、排卵日により胚移植日を決定する方法がありますが、最適なタイミングは、胚移植と子宮内膜の着床できる時期を合わせることです。子宮内膜の分泌期への変化はプロゲステロンによって誘導されます。つまり、胚盤胞の理想的な移植のタイミングは、プロゲステロンから曝露後 6 日目に移植されることです。 黄体形成ホルモン (LH) サージは、自然排卵周期で胚移植日を決定するために使用されることもあります。


  個々により、LH サージと排卵のタイミング、LHの振幅・持続時間などばらつきがあります。 さらに、子宮内膜の着床への準備は、LH 自体ではなく、プロゲステロンによってもたらされます。したがって、LHサージのタイミングは、プロゲステロン上昇のタイミング、胚移植日を決める間接的なマーカーとして使用されます。


 この研究では、卵胞の超音波モニタリングと月経周期の連続的なホルモン状態変化を観察することで、LH上昇とプロゲステロン上昇の間の期間が変化するか調査しました。


<方法>
 卵胞が14 mm以上になったら排卵時期を正確に決定するために、血清LH、FSH、エストラジオールおよびプロゲステロンレベルの連続測定が開始されています。LH サージは、前回より 180% 上昇したときに開始とし、プロゲステロン濃度は1.0ng/ml以上となった場合、排卵とみなされ、これを0日目とし5日後に胚移植としています。


<結果>
 102人の女性が、排卵までの連続3日間の連日ホルモン測定し、LH 上昇とプロゲステロン上昇の期間で 3 つ排卵パターンがみつかりました。排卵の2日前(- 2日)にLH上昇があり:21人(20.6%)、排卵前日(- 1日)にLH上昇があり:71人(69.6%)、排卵日(0日目)にLHピークあり:10人(9.8%)の3パターンが観察されました。
 LH 上昇に基づいた胚移植日決定は、LH 上昇からプロゲステロン上昇までの期間は約 1 日であるため、患者の 30.4% はプロゲステロン上昇に基づいた胚移植日とは異なる日に胚移植されたことになります。
 排卵の2日前にLH上昇があった女性は、排卵と同日にLH上昇があった女性よりもBMIが有意に高く、AMHが有意に低い結果でした。


<まとめ>
 血清プロゲステロンが1ng/ml 以上となるLH上昇は個々で異なり、3パターン存在することがわかりました。そのためLH 自体は、プロゲステロンの上昇によって決定される排卵日推定の最良の指標ではない可能性があることが示唆されました。BMIが高く、AMHが低い女性は特にLHを指標にしない方がよいかもしれません。



尿中 LH サージから排卵までの間隔は、22 時間から 56 時間の範囲で顕著な個人差が見られると報告されています。また、血清でのLHサージの定義も曖昧であるため、LHだけで排卵日の推定は困難と予想されます。
また、この報告は妊娠率がどうなったかは報告されていません。

×

非ログインユーザーとして返信する