妊娠の方法と早産のリスク

妊娠の方法と早産のリスクを人口ベースの研究を行なった報告がありましたのでご紹介いたします。


Fertility and Sterility® Vol. 118, No. 5, November 2022 0015-0282


不妊治療の有無に関わらず多胎妊娠率が上昇すれば早産率も上昇します。しかし、Goldenberg R.L.やBarros F.C.らは不妊治療に関しては単胎妊娠も早産と関連していると報告しています。不妊原因、不妊治療の種類、または不妊治療に関連する妊娠合併症が、早産のリスク増加に異なる影響を与えるかどうかは不明です。さらに不妊治療を受けていない不妊症も早産と関連している可能性があると報告されています。
Ray J.G.らは、早産の約 30% ~ 35% は医療者が決めるものであり、多くの高所得国ではその割合が 50% にもなると報告しています。医療者主導の早産は、母体および/または胎児の状態による分娩誘発や帝王切開によって起こります。Chen A.やLisonkova S.らは残りの 50% ~ 70% は、自然早産または早期破水 (PPROM) 後に起こります。医療者主導の早産は、自然早産と比較して、新生児の死亡率と罹患率のリスクが 2 倍になると報告しています。
この研究は、妊娠様式と妊娠 37 週未満での早産リスクとの関連性を評価することでした。また、妊娠 34 週未満での早産リスクも評価しています。


<結果>
649,918 人の女性のうち、合計 732,810 人の単生児と死産が含まれていました。 これらのうち、646,926 人 (88.3%) は介入なく自然妊娠、68,822 人 (9.4%) は不妊症で不妊治療なく自然妊娠、9,024 人 (1.2%) は 排卵誘発(OI)/人工授精(IUI )、8,038人 (1.1%) は IVF/ICSI でした。 


妊娠 37 週未満の早産の症例は 45,343 件 (6.2%) あり、そのうち 33,117 件 (4.5%) は自然発生で、12,226 件 (1.7%) は医療者により決められました。 さらに、これらの数値は、すべての早産の 73% が自然発生、27% が医療者が決めており、妊娠様式によって異なっていました。 医療者が決めた早産は、自然妊娠女性では全早産の 26% (10,033/38,444) でしたが、体外受精では全早産の 40% (350/869) を占めていました。 


37週未満での早産の調整リスク比(aRR)は、自然妊娠による出産と比較して、不妊治療の有無にかかわらず不妊症の女性で増加しました。 37 週未満での医療者が決めた早産は、自然妊娠による出産と比較して、不妊治療を受けていない不妊症の女性で1.23倍、OI/IUIで1.48倍、および IVF/ICSI で2.35倍の早産率でした。 
37 週未満の自然早産に対応する aRR は、自然妊娠による出産と比較して、不妊治療を受けていない不妊症の女性で1.15 倍、OI/IUIで1.19倍、および IVF/ICSI で 1.40倍の早産率でした。


妊娠 34 週未満の早産の結果については、RR は 37 週未満の早産と同様のパターンに従いました。(不妊治療を受けていない不妊症女性はリスクがそれほど高くなかった。)


合併症 (FGR、妊娠高血圧症、妊娠高血圧腎症、妊娠糖尿病、前置胎盤、胎盤剥離など) の分布を、早産の種類および妊娠様式別に示しています。医療者が決めた合併症のない早産は、IVF/ICSI で最も高くなりました。すべての妊娠方法で、妊娠高血圧症、妊娠高血圧腎症、および前置胎盤が、医療者が決めた合併症を伴う早産に最も寄与していました。さらに、前置胎盤の発生率は、IVF/ICSI 妊娠 (12.0%) で、自然妊娠 (6.2%) よりも高かった。自然早産または合併症のないPPROMは、不妊治療、特に体外受精/ICSIで割合が高かった。妊娠糖尿病は、合併症を伴う自然早産に最も寄与しており、不妊治療や体外受精/ICSI を受けていない不妊症患者で最も高かった。同様に、前置胎盤の発生率 (4.5%) は、IUI妊娠 (1.2%) よりも IVF/ICSI 妊娠の方が高かった。一方、OI/IUI では、妊娠高血圧症、子癇前症、および妊娠糖尿病に続発する合併症を伴う PPROM の発生率が高くなりました。


<結論>
単胎妊娠で、不妊治療をしていない不妊症の妊娠と不妊治療(OI/IUIおよびIVF/ICSI)を行った後の妊娠はそれぞれ、自然および医療者が決めた早産のリスク増加と関連していました。介入なしの妊娠から、不妊治療なしの不妊症患者の妊娠、非侵襲的不妊治療での妊娠(OI/IUI)、侵襲的な不妊治療での妊娠(IVF/ICSI)へと早産の割合が高くなる方向に進んでいました。


このことより、不妊治療を受けていない不妊症女性、または不妊治療 (OI/IUI および IVF/ICSI) を受けている女性の中で、自然早産のリスクが高い女性を特定し、医療者主導の早産のリスクを軽減するための戦略が必要となります。


この報告ではですが、
低用量アスピリンが自然早産、FGR、および妊娠高血圧腎症のリスクを適度に減少させることが報告されており、今後の追加研究によりリスクの高いケースでは妊娠初期に低用量アスピリン予防の開始を促進する必要があるのではないか。
という記載がありました。

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