子宮筋腫と腺筋症が妊娠に影響するか①

今回、子宮筋腫と腺筋症に関する報告がありましたのでご紹介いたします。


BioMed Research International Article ID 5926470


妊娠の成立には、胚と子宮内膜の両方が重要な働きをします。また、内分泌障害、遺伝性および後天性の血栓形成傾向、免疫学的異常、慢性炎症などが、子宮内膜受容性の低下を引き起こす可能性があります。子宮内膜ポリープ、子宮内癒着、筋腫、腺筋症などの後天性の構造異常は、胚の着床に影響する可能性があります。また、妊娠中も影響する可能性があります。


①子宮筋腫
子宮筋腫は生殖年齢にある女性でよくみられる良性腫瘍です。アフリカ系アメリカ人女性では 35 歳までに 60%、白人女性では 40% の子宮筋腫の発生率が報告されています。早期の初経、未産、カフェイン、アルコール摂取、肥満、高血圧はすべて筋腫の発生リスクを高めることがわかっていますが、喫煙はエストロゲン代謝の相対的な変化に関与している可能性があり、筋腫の発症リスクを低下させることが示されています。


解剖学的に、筋腫は、正常な子宮筋層細胞間で増殖する単クローン性腫瘍であり、正常な子宮筋層細胞間で偽被膜を形成します。この偽被膜は、筋腫を取り囲み、健康な子宮筋層から分離していると報告されています。
2011年にMunroらにより筋腫と子宮壁との関係で分類したFIGO分類が発表されました。
この分類によれば、タイプ0からタイプ8までの9つのタイプの筋腫が記載されています。


タイプ0:有茎性の子宮腔内
タイプ1: 粘膜下で筋層内に < 50% 
タイプ2: 粘膜下で筋層内に ≥ 50% 
タイプ3: 完全に筋層内にあり、子宮内膜に接してる 
タイプ4: 完全に筋層内にある
タイプ5: 漿膜下で筋層内に ≥ 50%
タイプ6: 漿膜下で筋層内に < 50% 
タイプ7: 漿膜下有茎
タイプ8:その他(頸部筋腫、寄生筋腫など)
複合タイプ:筋腫が子宮腔に突き出て子宮壁全体に広がり、腹腔内にも筋腫が突出しているタイプ(2 - 5)
(ただ、卵管口や子宮頸部との関係における子宮筋腫のサイズ、数、正確な位置は、分類に考慮されていません。)


・筋腫と不妊症
筋腫は不妊女性の 5 ~ 10% に存在しますが、原因として現れるのは 2 ~ 3% にすぎないと報告されています。すなわち筋腫の 60% が不妊の原因になることはないということです。


・不妊のメカニズム
(i) 子宮内膜の歪みより、着床率を損なう可能性
(ii) 子宮筋腫の増大・変形は、精子の進行を妨げる可能性
(iii) 子宮頸部の変位は、精子の通過を妨げる可能性
(iv) 筋腫による内膜の蠕動の変化は、女性の生殖器系への精子の進行を妨げる可能性
(v) 子宮内膜および子宮筋層の血液供給の変化は、子宮収縮と着床の両方を妨げる可能性
(vi) 子宮腔の変形による月経流出の滞留は、精子の進行と着床の両方を妨げる可能性
(vii) 卵管口の変位や閉塞は、卵管の開通性を損なう可能性
(viii) 卵管 - 卵巣の解剖学的関係の変化は、排卵後の卵管采から卵子の回収を妨げる可能性
(ix) 子宮内膜に接する筋腫による慢性子宮内膜炎症は、子宮内膜環境を変化させる可能性
(x) 子宮内膜表面に近接または接している筋腫に起因する組織学的変化は、着床を損なう可能性
(xi) 子宮内膜受容性の分子マーカーの中で、子宮内膜全体の HOX 遺伝子発現の減少は、単純に粘膜下筋腫ではなく、生殖能力の障害が全体的な影響に起因する可能性
などさまざま報告されています。


・筋腫と妊娠
タイプ0−3の粘膜下筋腫や筋層内筋腫は妊娠成立に影響をもたらす可能性があります。
Oliveira F. Gらのレトロスペクティブ コホート研究では、直径 2.85 cm を超える筋層内筋腫は、IVF/ICSI 治療を受ける女性の分娩率に悪影響を及ぼす可能性があることが示唆されています。
粘膜下筋腫に関しては、着床率、臨床的妊娠、継続妊娠/出生率、流産率に影響し、手術により改善するという報告が多い。 


・妊娠中の筋腫
妊娠中の筋腫の有病率は 12% (範囲 3–12%) と報告されています。妊娠中はエストロゲンレベルが高いため、妊娠中に筋腫が成長する傾向があるいわれていましたが、現在、筋腫のサイズは妊娠中に大幅に増加せず、小さくなるのではないかと報告されています。


Katz V. L.らにより妊婦中の子宮筋腫による症状は疼痛を伴うことが多いと報告されています。 疼痛は、非ステロイド性抗炎症薬によって有効な鎮痛効果がもたらされることを考えると、Klatsky P. C.らにより痛みはおそらく筋腫変性からのプロスタグランジン放出に起因のではないかと報告されています。
筋腫の存在により、流産、逆子、前置胎盤、早産、胎盤剥離、分娩後出血、帝王切開などの産科合併症のリスクが増大すると報告されています。


・筋腫の治療
子宮鏡手術や腹腔鏡手術などの低侵襲アプローチが一般的ですが、子宮動脈塞栓術や高周波磁気共鳴誘導集束超音波手術(MRgFUS)などの非侵襲的技術などの新しい代替低侵襲法も行われることがあります。ただ、子宮動脈塞栓術やMRgFUSに対する報告が少なく、妊娠を希望されている方は慎重にならなければいけません。
薬物療法もありますが、妊娠を試みている場合は他の選択肢を提示されると思われます。

×

非ログインユーザーとして返信する