採卵直後に精漿を膣内に注入したら、生児獲得率は変わるか?
採卵直後に精漿を膣内に注入したら、生児獲得率や臨床妊娠率は上昇するか検討した報告をご紹介します。
Fertil Steril® Vol. 122, No. 1, July 2024 0015-0282
動物やヒトで精漿中に子宮内膜の受容性を変化させる免疫活性因子(炎症誘発性サイトカイン(例:インターフェロン-ɣ、インターロイキン-6、-8))や、胚に対する免疫寛容を高める物質(例:形質転換成長因子-β)などがあると報告されています。
Saccone らによるメタ分析では、卵子採取 (OPU) 時に精漿を膣内および子宮頸管内に注入することで妊娠率の上昇に関連性が報告されましたが、生児獲得率は増加しなかったため、さらなる研究が必要となります。
そのためこの報告は、採卵直後に精漿もしくは生理食塩水を膣内に注入し、生児獲得率や妊娠率が変わるか比較検討しています。
1から3回目の体外受精治療を受け、採卵後2−5日後に新鮮胚移植を行なった方を対象としています。グレードが悪ければ2個移植も行なっているようです。
結果
合計 792 組のカップルが対象となり、そのうち 393 組 (49.6%) が精漿による治療に、399 組 (50.4%) が生理食塩水 (対照) による治療に割り当てられました。
移植日については介入群間で差はありませんでした。5日目に移植した人は32.5%と30.2% (P=.82) でした。5日目に移植するとLBRが高くなるため、移植日だけでなく女性の年齢と移植胚数に合わせて調整されました。
精漿群では、妊娠反応陽性:35.4%、臨床妊娠:28.8%、生児獲得率:26.5%でした。生理食塩水群では、妊娠反応陽性:37.3%、臨床妊娠:33.6%、生児獲得率:29.8%でした。 生児獲得率の調整済み RR は 0.86 (95% CI 0.70–1.07)、妊娠反応陽性は 0.93 (95% CI 0.78–1.10)、心拍確認妊娠は 1.00 (95% CI 0.97–1.03) でした。つまり、2 群間 (精漿 vs. 生理食塩水) で、統計的に有意な差はありませんでした。
結論
採卵直後に精漿もしくは生理食塩水を膣内に注入しても、生児獲得率や臨床妊娠率は上昇しませんでした。
ただ、精漿中のサイトカイン濃度が異なると、子宮内膜で異なる反応が生じる可能性があると考えられました。