胚盤胞の形態学的評価や胚生検が出生時体重に影響するか

胚盤胞の形態学的評価や胚生検が出生時体重に影響するか検討した報告がありましたのでご紹介致します。


”Fertility and Sterility Volume 119, Issue 1, January 2023, Pages 56-66”


胚盤胞の形態学的評価に使用される内細胞塊(ICM)、栄養外細胞(TE)、胚盤胞の発育段階は胚盤胞を選択する上で重要であります。
胚盤胞の拡大とTEが臨床妊娠と出産に関連しているという報告は多い。ただ、形態学的評価が新生児の出生時体重に及ぼす影響を調べた研究はほとんどありません。


この研究では、単一胚盤胞移植を 4 つの治療タイプに分けられました(生検を行なった胚盤胞移植、胚盤胞で融解し移植、day3に融解し胚盤胞移植、新鮮胚移植)。
サブグループ解析は、胚盤胞の段階 (5 日目と 6 日目) に従って実行されました。 私たちの目的は、胚盤胞の形態学的評価と生児出生および出生時体重との関連が、胚盤胞の凍結および生検によって影響を受けるかどうかを調査することでした。


形態学的評価は
3 = 完全な胚盤胞: TE 孵化なし。
4 = 拡大した胚盤胞: <50% TEが押し出されている状態。
5 = 孵化胚盤胞: >50% TE 孵化。
6 = 孵化した胚盤胞: 完全に孵化した胚盤胞。
のように分類


結果
出生との関連
多変量ロジスティック回帰モデルを使用して、交絡因子を調整した後、胚盤胞の形態学的評価と出生との関連を解析しました。 生検胚盤胞では、交絡因子を調整後、3 つの形態学的評価すべてが出生に関連していました。拡大胚盤胞グレード 4の 出生率 (LBR) (41.90%) は、グレード 5 の拡張 (50.94%) よりも 0.78倍有意に低い結果でしたが。グレード5とグレード6 (52.62%) に統計的な差はありませんでした。
ICMのグレード別出生率は、グレード A :59.37%、グレード B :48.54%、 グレード C :21.05% 。
ICM のグレードが良いほど、生児出産の可能性が高くなりました。
TEのグレード別出生率は、グレード A :56.30%、グレード B :54.13%、 グレード C :38.76% 。
TEのグレード AとBは同等で、グレード CはBと比較して0.58倍低い結果でした。


非生検胚盤胞(生検を行なった胚盤胞移植、胚盤胞で融解し移植、day3に融解し胚盤胞移植、新鮮胚移植)において、5 日目の胚盤胞は、ICM と TE の両方が出生に関連していましたが、6 日目の胚盤胞は出生に影響を与えたのは TE だけでした。 


出生時体重との関連
3 つのパラメーターについて、グレードの異なる単胎生児出生の平均出生時体重を計算し、z スコアを使用して妊娠期間と性別を調整しました。 多重線形回帰を使用して、妊娠前および妊娠後の交絡因子を調整した後、胚盤胞の形態学的評価と z スコアとの関連を分析しました。 多重線形回帰の結果は、6 日目の生検拡大胚盤胞が出生時体重と関連し、6日目の融解胚盤胞の TE グレードが出生時体重と負の関連性を示されました。他のサブグループでは、出生時体重と胚盤胞の形態学的評価は、出生時体重と相関しませんでした。


生検後の胚盤胞では、妊娠期間と性別を調整した後、重回帰分析では、グレード 6の拡大胚盤胞の、z スコアはグレード 5 の拡大胚盤胞よりも高い結果でした。


融解胚盤胞では、他の要因を調整した後、グレード CのTE の胚盤胞は、グレード BのTE と比較して z スコアが高い結果でした。


<まとめ>
この研究では、単一胚盤胞移植周期を4つの治療タイプ(生検を行なった胚盤胞移植、胚盤胞で融解し移植、day3に融解し胚盤胞移植、新鮮胚移植)に分類し、胚盤胞の発育段階(5日目と6日目)によるサブグループ解析を行いました。 交絡因子を調整後、胚盤胞の生検は、胚盤胞の形態学的評価と生児出生率、出生時体重との関連性に影響を与える可能性があります。また、胚盤胞の凍結は、胚盤胞の形態学的評価と出生時体重との関連性に影響を与える可能性があります。



影響を与える原因として考えられる説
・凍結に関して
胚盤胞は凍結保存中に機械的、化学的、温度的ストレスにさらされているため、妊娠転帰に関する凍結前の形態評価の予測が損なわれる可能性があります。
・生検に関して
胚盤胞の発生能力がTE生検によって損なわれる可能性がありますが、良好胚盤胞、特にTEが良好胚盤胞は生検の侵襲に対してより耐性があります。 胚盤胞の拡大は、TE 細胞が胚腔に水を送り込むことを必要とするプロセスであり、TE の質の指標となる可能性があります。 また、 TE と ICM 細胞間の活発なコミュニケーションが確認されており、ICM は、成長因子の放出によってTE の増殖を誘導します。 逆に、TE 細胞の生検が ICM 細胞の増殖能力を阻害する可能性があることが報告されています。

体外受精-胚移植における睡眠の影響

体外受精-胚移植に対する睡眠の影響を調査した前向き研究が発表されていましたのでご紹介いたします。


Fertility and Sterility Volume 119, Issue 1, January 2023, Pages 47-55


睡眠に関する報告は様々あり、
K.A. Michelsらにより毎日の睡眠時間は、黄体期の平均エストラジオール濃度およびプロゲステロンレベルと正の相関があることが報告されています。 また、L. Palらによると、卵巣予備能が低下した41歳未満の女性は、睡眠障害を示す可能性が有意に高いと報告しています。
ARTに関しては、P. LlanezaらによりIVF を受けている 200 人において、睡眠障害と採卵数に負の相関関係があり、睡眠障害は卵巣の反応不良と関連すると報告されています。L. Mínguez-Alarcónらは夜勤のある仕事をしている女性と昼のみで働く女性を比較すると、平均成熟卵獲得数が2.3個 少ないと報告されています。


この研究は、IVF-ETの臨床成績における睡眠の影響を検討しています。


合計 3,183 のアンケートを使用され、ピッツバーグ睡眠品質指数 (PSQI) アンケートとミュンヘン ChronoType アンケートを統合しました。睡眠の質は PSQI によって定量化されました。PSQI は、主観的な睡眠の質、睡眠潜時、持続時間、効率、睡眠障害、睡眠薬の使用、日中の機能障害を測定します。 各部分のスコアは 0 ~ 3 ポイントで、合計は 0 ~ 21 の範囲です。主観的な睡眠の質は、スコアが 5 を超えた場合、睡眠の質が悪いとされました。
週平均睡眠時間は、平日/勤務日および週末/非勤務日の睡眠時間の加重平均として計算されました。 
週平均睡眠時間 = ([平日の睡眠時間/勤務時間 × 週あたりの勤務日数] + [週末の睡眠時間/非勤務時間 × 週あたりの非勤務日]) / 7
平均睡眠時間は、5 つのグループに分けられました。
≤7時間/日、7–8時間/日、8–9時間/日、9–10時間/日、 >10時間/日


活動時間を評価するために、睡眠の中間点が午前2時30分より前の女性を朝型、睡眠の中間点が午前3時30分より遅い女性を夜型、それ以外を中間型と定義しました。


<結果>
参加者の 28.2% (899/3183) が睡眠の質が悪いと報告されており、睡眠の質が良いと報告した人に比べて、未産の割合が高く、BMI が低い結果でした。朝型であった参加者は、中間型、夜型の参加者よりも平均年齢が高く、BMI も高かった。 週平均睡眠時間は、年齢の減少すると増加していました。 平均睡眠時間が1日7時間以下のグループが最もBMIが高く、1日10時間を超えるグループがそれに続きました。


睡眠の質が良い女性は、睡眠の質が悪い女性よりも臨床妊娠率と生児出生率が高かった。
クロノタイプでは夜型女性の臨床妊娠率は70.8%で、朝型女性(64.4%)よりも有意に高かく、出生率も夜型女性が最も高い結果でした。 中間型と比較すると有意ではありませんでした。ただ、交絡因子を調整した後、睡眠クロノタイプと臨床妊娠との関連は統計的に有意ではありませんでした。
朝型女性は、流産率が最も高く、臨床妊娠率と生児出生率が最も低い結果でした。 夜型女性と比較して、朝型女性は、臨床的妊娠が0.91倍、出生率が0.83倍と減少し、さらに、朝型は流産と正の関連があることがわかりました。
睡眠の質が良い女性は、睡眠クロノタイプに関係なく、臨床妊娠率が高いこと、睡眠の質と睡眠時間の分析により、臨床妊娠と出生率が、睡眠の質が良好な女性で高いことより、睡眠クロノタイプや睡眠時間ではなく、睡眠の質が、IVF-ET の臨床成績との関連に重要な役割を果たすことを示しています。


睡眠時間と IVF-ET の臨床成績との間に関連はありませんでした。
睡眠の質と臨床妊娠との関連は、交絡因子を調整した後も残っており、良好な睡眠の質と臨床妊娠に正の相関を認めました。睡眠の質が良いと報告したグループは、潜在的な交絡因子を調整した後、睡眠の質が悪いと報告したグループと比較して、1.12倍出生率が高い結果でした。


睡眠の質とIVF-ETの臨床成績との関連は、35歳未満の女性と新鮮胚移植でより顕著でした。


胚移植前60日または90日以内に収集された睡眠データを持つ女性に限定された分析の結果は、睡眠クロノタイプが流産と有意に関連していることを示しました。60日以内に収集された睡眠データを使用した分析では、朝型、中間型女性は、夜型女性よりも流産する可能性がそれぞれ2.20倍、2.45倍高い結果でした。 90 日以内に収集された睡眠データを使用した分析では、朝型、中間型女性は、夜型女性より流産する可能性がそれぞれ 2.35倍、2.06倍高い結果でした。


まとめ
胚移植前の睡眠の質とクロノタイプは、IVF-ETの臨床成績と関連していました。良好な睡眠の質は、臨床妊娠や出産などに有益な要因となる可能性があります。 朝型クロノタイプは、IVF-ETの転帰には悪影響を及ぼす可能性があります。睡眠の質と睡眠クロノタイプと IVF-ET 転帰と関連が、35 歳未満の女性と新鮮胚移植でより顕著でありました。睡眠の質は、IVF-ET 転帰に関連する最も顕著な要因でした。


ただこの研究のみで判断するのは早いと思われます。メカニズムも不明であり、以前の研究とも一致しない結果もあり、追加研究が望まれます。

長期の胚盤胞凍結は妊娠転帰に影響するか?

胚の凍結保存は一般的となってきていますが、長期の凍結が妊娠転帰に影響するか調べた報告をご紹介致します。


Fertility and Sterility Volume 119, Issue 1, January 2023, Pages 36-44


W. Liらの胚の保存期間が妊娠・新生児に及ぼす影響を調査しているコホート研究では、ガラス化初期胚の生存率、出生率、在胎週数、単胎の出生時体重に、最長 5 年間の保存期間で有意差がなかったことが報告されています。 ただ、2020年に発表されたJ. Liらの研究では、2年までの胚の凍結保存期間では、凍結期間が長くなれば臨床的妊娠率と生児出生率が著しく低下するとの報告がありました。報告により凍結期間が妊娠転帰に影響するかは様々です。
この研究では、胚盤胞のガラス化後の凍結保存期間がおよび新生児の転帰に及ぼす影響を、同じ採卵周期で凍結できた胚を使用して、2人分娩した方を対象とし調査しています。


5 つの保存期間でグループ分けされました。 
グループ1 (保存期間 <3 年): 1,890 人
グループ2 (保存期間 3 ~ 4 年): 2,693 人
グループ3 (保存期間 4 ~ 5 年): 1,344 人
グループ4 (保存期間 5 ~ 6 年): 578 人
グループ5 (保管期間 6 年以上 10.5 年以下): 395 人 
71 人が、胚盤胞の融解に失敗したため、移植周期をキャンセルしました。 合計6,829人が5つのグループに分類されました。


胚盤胞の生存率、生化学的妊娠、臨床的妊娠、流産、子宮外妊娠、出生率、新生児の性別と出生時体重、早産率が調査されました。


結果
ガラス化胚盤胞の生存率は、グループ 1 からグループ 2、3、4、 5 への長期保存に伴って有意に減少しました。
グループ1、2、3、4の間で生化学的妊娠、臨床的妊娠、生児出生率に有意差はありませんでした。しかし、生化学的妊娠、臨床的妊娠、生児出生率は、保管期間が3年未満(グループ1)と比較して、保管期間が6年以上(グループ5)で大幅に減少しました。
しかし、ガラス化胚盤胞の長期保存と、流産、子宮外妊娠率に有意差は認められませんでした。 新生児転帰は、新生児の性別、出生時体重、早産率は同等でした。


まとめ
ART によってすでに 1 人の子供を出産した 6,900 組の不妊カップルを対象としたこの研究では、保存期間が6年以上の場合、生化学的妊娠、臨床的妊娠、生児出産率が悪影響を受けることが明らかになりました。 しかし、他の妊娠転帰や新生児転帰は、ガラス化胚盤胞の凍結保存期間によって悪影響を受けることはなく、長期間保存されたガラス化胚盤胞は、ART で使用するための安全な選択肢でした。


ただ、メカニズムは不明ということでしたが、動物実験では下記が報告されています。
B. Somoskoiらより、胚盤胞のガラス化がミトコンドリアの分布パターンに影響を与え、過剰なフリーラジカルが凍結保存後のマウスの胚盤胞で DNA 断片化を引き起こす可能性があることを報告しています。また、E. Estudilloらは胚盤胞の長期のガラス化により、エピゲノムが変化することが報告されています。

子宮筋腫と腺筋症が妊娠に影響するか②

今回は腺筋症についてご紹介いたします。


②子宮腺筋症
子宮腺筋症とは、子宮筋層への子宮内膜の浸潤を特徴とする非腫瘍性の良性子宮疾患です。 実際、異所性子内膜腺・間質は、子宮筋組織内に見られ、肥厚性・過形成性の子宮筋層に囲まれています。一般的に後壁が多いと報告されています。子宮腺筋症病変が限局的に増殖した場合は腺筋腫と言われ筋腫のように見えることがあり、月経困難症を伴うことがあります。超音波だけでは、診断が難しくMRIを用いて判断することもあります。


3 分の1は無症候性ですが、主な臨床症状として、月経過多や月経困難症などがあります。 慢性的な骨盤痛を訴えることもあります。真の罹患率は不明ですが、女性の20%ほどが罹患しているという報告もあります。Kunz G.らの報告によると、子宮内膜症群の 79%、一般群の 9% に腺筋病変が存在するとのことでした。


・腺筋症と不妊症
腺筋症と不妊症との明確な関連性はわかっていませんが、腺筋症と不妊を結びつける強いエビデンスはないようです。腺筋症が不妊症の原因となる可能性が以下に述べられています。


子宮の蠕動を介して、排卵が起こる卵巣と同側の卵管に精子を送り込むことが知られていますが、腺筋症による異常な子宮収縮がそれをじゃまし妊娠しにくくなるのではないかという報告もあります。また、子宮収縮の頻度が多いほど着床率と妊娠率が低いという報告がありますが、腺筋症が着床不全の原因と断定するほどのエビデンスはありません。


また、Otaらの報告によると腺筋症では子宮内膜の胚の受容能も損なわれるようです。 子宮内膜間質の血管新生は分泌期に異常に増加し、子宮内膜環境を混乱させ、着床に悪影響を与えるのではないかということでした。


さらに、子宮内膜におけるサイトカインや成長因子、シトクロム P450、β3インテグリンなどの細胞接着分子の発現プロファイルの変化が、腺筋症により不妊症を引き起こす原因の一つである可能性もあります。


メタアナライシスでは、腺筋症が着床率・出生率を下げるという報告や変わらないという報告があり様々です。


・腺筋症合併妊娠
腺筋症は、早産や破水のリスクが増加することが報告されており、潜在的なメカニズムとして、脱落膜絨毛羊膜または全身性炎症が考えられています。Sandberg E. C.らの腺筋症に関連する産科合併症に関する文献のレビューでは、29例のみでありますが、子宮破裂、分娩後出血、異所性妊娠のリスクが増加することが報告されています。ただ、腺筋症が産科転帰のリスクに影響を与えることという強力なエビデンスはないようです。


・治療
挙児希望であれば、限局性の腺筋症であれば腺筋腫の切除が選択肢となります。機能的な子宮を維持するため、びまん性の腺筋症であれば異常組織の部分的切除などが選択肢となりますが、その後の妊娠経過に関する報告が少なく慎重な判断が必要となります。また、筋腫と同様に子宮動脈塞栓術やMRI ガイド下集束超音波手術(MRIgFUS)なども行なっている施設もあります。
ただ、一般的にはホルモン療法を勧められうことが多いと思われます。

子宮筋腫と腺筋症が妊娠に影響するか①

今回、子宮筋腫と腺筋症に関する報告がありましたのでご紹介いたします。


BioMed Research International Article ID 5926470


妊娠の成立には、胚と子宮内膜の両方が重要な働きをします。また、内分泌障害、遺伝性および後天性の血栓形成傾向、免疫学的異常、慢性炎症などが、子宮内膜受容性の低下を引き起こす可能性があります。子宮内膜ポリープ、子宮内癒着、筋腫、腺筋症などの後天性の構造異常は、胚の着床に影響する可能性があります。また、妊娠中も影響する可能性があります。


①子宮筋腫
子宮筋腫は生殖年齢にある女性でよくみられる良性腫瘍です。アフリカ系アメリカ人女性では 35 歳までに 60%、白人女性では 40% の子宮筋腫の発生率が報告されています。早期の初経、未産、カフェイン、アルコール摂取、肥満、高血圧はすべて筋腫の発生リスクを高めることがわかっていますが、喫煙はエストロゲン代謝の相対的な変化に関与している可能性があり、筋腫の発症リスクを低下させることが示されています。


解剖学的に、筋腫は、正常な子宮筋層細胞間で増殖する単クローン性腫瘍であり、正常な子宮筋層細胞間で偽被膜を形成します。この偽被膜は、筋腫を取り囲み、健康な子宮筋層から分離していると報告されています。
2011年にMunroらにより筋腫と子宮壁との関係で分類したFIGO分類が発表されました。
この分類によれば、タイプ0からタイプ8までの9つのタイプの筋腫が記載されています。


タイプ0:有茎性の子宮腔内
タイプ1: 粘膜下で筋層内に < 50% 
タイプ2: 粘膜下で筋層内に ≥ 50% 
タイプ3: 完全に筋層内にあり、子宮内膜に接してる 
タイプ4: 完全に筋層内にある
タイプ5: 漿膜下で筋層内に ≥ 50%
タイプ6: 漿膜下で筋層内に < 50% 
タイプ7: 漿膜下有茎
タイプ8:その他(頸部筋腫、寄生筋腫など)
複合タイプ:筋腫が子宮腔に突き出て子宮壁全体に広がり、腹腔内にも筋腫が突出しているタイプ(2 - 5)
(ただ、卵管口や子宮頸部との関係における子宮筋腫のサイズ、数、正確な位置は、分類に考慮されていません。)


・筋腫と不妊症
筋腫は不妊女性の 5 ~ 10% に存在しますが、原因として現れるのは 2 ~ 3% にすぎないと報告されています。すなわち筋腫の 60% が不妊の原因になることはないということです。


・不妊のメカニズム
(i) 子宮内膜の歪みより、着床率を損なう可能性
(ii) 子宮筋腫の増大・変形は、精子の進行を妨げる可能性
(iii) 子宮頸部の変位は、精子の通過を妨げる可能性
(iv) 筋腫による内膜の蠕動の変化は、女性の生殖器系への精子の進行を妨げる可能性
(v) 子宮内膜および子宮筋層の血液供給の変化は、子宮収縮と着床の両方を妨げる可能性
(vi) 子宮腔の変形による月経流出の滞留は、精子の進行と着床の両方を妨げる可能性
(vii) 卵管口の変位や閉塞は、卵管の開通性を損なう可能性
(viii) 卵管 - 卵巣の解剖学的関係の変化は、排卵後の卵管采から卵子の回収を妨げる可能性
(ix) 子宮内膜に接する筋腫による慢性子宮内膜炎症は、子宮内膜環境を変化させる可能性
(x) 子宮内膜表面に近接または接している筋腫に起因する組織学的変化は、着床を損なう可能性
(xi) 子宮内膜受容性の分子マーカーの中で、子宮内膜全体の HOX 遺伝子発現の減少は、単純に粘膜下筋腫ではなく、生殖能力の障害が全体的な影響に起因する可能性
などさまざま報告されています。


・筋腫と妊娠
タイプ0−3の粘膜下筋腫や筋層内筋腫は妊娠成立に影響をもたらす可能性があります。
Oliveira F. Gらのレトロスペクティブ コホート研究では、直径 2.85 cm を超える筋層内筋腫は、IVF/ICSI 治療を受ける女性の分娩率に悪影響を及ぼす可能性があることが示唆されています。
粘膜下筋腫に関しては、着床率、臨床的妊娠、継続妊娠/出生率、流産率に影響し、手術により改善するという報告が多い。 


・妊娠中の筋腫
妊娠中の筋腫の有病率は 12% (範囲 3–12%) と報告されています。妊娠中はエストロゲンレベルが高いため、妊娠中に筋腫が成長する傾向があるいわれていましたが、現在、筋腫のサイズは妊娠中に大幅に増加せず、小さくなるのではないかと報告されています。


Katz V. L.らにより妊婦中の子宮筋腫による症状は疼痛を伴うことが多いと報告されています。 疼痛は、非ステロイド性抗炎症薬によって有効な鎮痛効果がもたらされることを考えると、Klatsky P. C.らにより痛みはおそらく筋腫変性からのプロスタグランジン放出に起因のではないかと報告されています。
筋腫の存在により、流産、逆子、前置胎盤、早産、胎盤剥離、分娩後出血、帝王切開などの産科合併症のリスクが増大すると報告されています。


・筋腫の治療
子宮鏡手術や腹腔鏡手術などの低侵襲アプローチが一般的ですが、子宮動脈塞栓術や高周波磁気共鳴誘導集束超音波手術(MRgFUS)などの非侵襲的技術などの新しい代替低侵襲法も行われることがあります。ただ、子宮動脈塞栓術やMRgFUSに対する報告が少なく、妊娠を希望されている方は慎重にならなければいけません。
薬物療法もありますが、妊娠を試みている場合は他の選択肢を提示されると思われます。