人工授精について

本日は人工授精についての報告をご紹介いたします。


Best Pract Res Clin Obstet Gynaecol. 2018
Does intra-uterine insemination have a place in modern ART practice?


WHOの不妊症の定義は、12カ月の性交にもかかわらず妊娠しなかったカップルと定義されています。その割合は、英国(NICE 2013)やオーストラリアでカップルの6人に1人、米国でカップルの10人に1人(CDCデータ)と報告されています。


不妊治療の最も一般的な原因は、男性不妊(記録された原因の37%)、原因不明(32%)、排卵障害(13%)、卵管疾患(12%)、子宮内膜症(6%)でありました(HFEAデータ2018)。


人工授精(IUI)は、一部の不妊症カップルにおいて安価で、侵襲の低い治療法です。 このIUIの原理は1973年にSettlageらが下記のように報告しています。
性交渉により腟上部に射精された精子は、1時間後0.1%のみが子宮頸管に到達し、1400万匹の運動性精子のうち1匹だけが、卵管内の受精部位に到達すると報告しています。 IUIの目的は、洗浄後の精子を受精部位での密度を増加させることであります。 洗浄・濃縮することにより、受精を妨げる可能性のある非運動精子、精液内のゴミ、白血球および精漿をなるべく取り除くことができます。このことにより、妊娠を促します。


卵巣刺激+IUIを行うと妊娠率は上昇しますが、多胎率も上昇するというデメリットがあります。HFEAデータ2018によると、2016年のIUIの生児獲得率は12%でした。成功率は、年齢の増加に伴って減少しました(35歳未満の患者では14%、35〜37歳の患者では12%)。しかし多胎率は8%でありました。


どのくらい精子が存在すればよいかというと、精子の質に関するBFSガイドラインでは、前進する運動精子の濃度がもっとも妊娠を予測できる因子であることが示されている。 IUIには少なくとも500万匹運動性精子が必要であり、その下では妊娠率が低下する可能性があります。
費用対効果を考えると、洗浄後総運動精子数(TMSC)が3百万匹以上であれば、IUIでは生児獲得する単価が低かったが、TMSCが低い男性ではIUIがIVFやICSIより高価であり、ICSIが最も費用効果が高いと報告されています。


様々な方がIUIにて治療されていますが、NICEガイドライン2013(CG 156)によると原因不明や男性因子、軽度の子宮内膜症である不妊カップルは、IUIよりも体外受精(IVF)を推奨しております。この根拠としていくつかの報告を考慮しています。その中の一つとしてBhattacharyaらの報告があります。この報告は、原因不明の不妊症に対し、待機治療(定期的な性交)、クロムフェンクエン酸塩(CC)および非刺激IUIを比較するRCTを実施しました。生児獲得率は、待機治療17%、CC 14%、非刺激IUI 23%であり、統計学的に有意でありませんでした。結論としては、CCまたはIUIは、待機治療より優れた生児獲得率を提供する可能性は低いというものでした。


しかしながら、TUI試験2018は、卵巣刺激したIUI(n = 101)3サイクルまたは待機療法(n = 100)3サイクルにランダムに割り当て妊娠率を検討しました(1:1)。待機群では9%の累積生存率であったが、IUI群は31%と高い値を示しました。 生児獲得率は27%(IUI)対7%(待機群)であった。 OHSSの症例はありませんでした。多胎妊娠はIUI群で6%でありました。この研究では、卵巣刺激を行なったIUIは安全かつ効果的な治療選択肢であり、待機療法よりも生児獲得率が3倍向上していると結論づけられました。


この他にも、NICEを支持しないような報告もあり、この報告の結論としては以下の通り述べられていました。
卵巣刺激したIUIは、原因不明不妊症や軽度男性因子の不妊症の方に対し、安全で安価、患者に優しく、IVFの代わりに劣らない可能性があるのではないか。それを証明するにはより良い研究が待たれるとまとめていました。


IUI成功の因子としては、年齢・運動精子数・不妊期間・流産の有無など挙げられています。上記のような因子を考えながら治療方針を決めていかなければなりません。

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