トリガー日を最適化すれば、ARTの治療成績が良くなる?

本日は採卵時のトリガー日を最適化するために機械学習アルゴリズムを使用すると、E2レベルを安全な範囲内に保ちながら、臨床結果が改善される可能性があるという報告をご紹介いたします。


Fertility and Sterility® Vol. 118, No. 1, July 2022 0015-0282


体外受精(IVF)サイクル中の卵巣刺激の最初の目標は、多数の卵胞を発育させ、複数の質の高い卵を回収することです。卵巣刺激中、プロトコールやゴナドトロピンの開始用量、種類などが卵の質に影響するかもしれません。最終的な卵胞の成熟を誘発するために、採卵2日前の夜にトリガー注射やスプレーを投与します。トリガーが早すぎると卵が成熟しなかったり、トリガーが遅すぎると卵が過熟であったり、卵巣過剰刺激症候群のリスクが高まる可能性があります。トリガー注射を投与する最適な時期は主観的な決定であり、診療所や医師によって大きく異なります。
 多くの研究が卵胞径と成熟(MII)卵獲得との関係を調査しており、小さすぎたり大きすぎる卵胞はMII卵を獲得する可能性が低いと報告しています。どの卵胞径が成熟率が高い過を決定する理想的な方法は、個々の卵胞吸引によるものです。しかし、そのような研究を大規模に実施することは困難です。Rosenらは卵胞径(> 18 mm、16–18 mm、13–15 mm、10–12 mm、および<10 mm)を個別に吸引したところ、卵の成熟率が卵胞径とともに増加すると報告しています。これまでの研究では、卵胞径と成熟卵獲得に高い相関関係があることは確立されていますが、個々の患者のトリガーのタイミングを最適化するためにどうすれば良いかはわかりません。
 この研究では、排卵誘発中にトリガーを行う最適な日を予測するための機械学習アプローチを紹介しています。このモデルは、線形回帰モデルを使用して、「当日と翌日」にトリガーを行った場合に獲得できるMII卵数を予測しています。また、翌日のE2レベルとMII卵数の結果の正確な予測を行います。


この研究には合計30,278サイクルが含まれています。


卵胞の測定値は、直径に基づいて6つのグループに分類されました:<11 mm、11–13 mm、14–15 mm、16–17 mm、18–19 mm、>19mm。採卵されたMII卵数、2PNおよび使用可能な胚盤胞が調べられました。


翌日と比較して当日にトリガーされた場合にMII卵数を予測できるように開発されました。当日または翌日トリガーされた場合に採卵されたMII卵数を予測するために、トリガー日とトリガー前日にそれぞれ測定された卵胞数とE2レベルを使用して線形回帰モデルが開発されました。最後に、E2予測モデルが開発され、卵胞数と1日前に測定されたE2レベルを使用して翌日のE2レベルを予測しました。これらのモデルを組み合わせることで、当日と翌日トリガーされた場合のMIIの結果の比較を可能にしています。


当日と翌日のMII卵予測数が増加傾向を示した場合、アルゴリズムは刺激を継続することを推奨し、減少傾向を示した場合、アルゴリズムは当日トリガーすることを推奨しました。


結果
トリガー当日のMII卵数を予測するための最も重要なサイズは、14〜15 mmの卵胞であり、次にサイズが16〜17 mmの卵胞でした。19mmを超えるサイズの大きな卵胞は最も影響がありませんでした。翌日トリガーのMII卵数を予測するには、サイズが11〜13 mmの卵胞が最も重要でしたが、サイズが19mmを超える卵胞は依然として最も影響がありませんでした。


トリガーが早かった群は、時間通りに行えたトリガー群と比較して、平均でMII卵が2.3個少なく、2PNが1.8個少なく、使用可能な胚盤胞は1.0個少なかった。トリガーが遅かった群は、時間通りのトリガー群と比較して、平均でMII卵が2.7個少なく、2PNが2.0個少なく、使用可能な胚盤胞は0.7個少なかった。


15個の予測MII卵(全サイクルの85%)のしきい値に達していない群に対するサブ分析を実施しています。 このグループでは、早いまたは遅いトリガーが、それぞれサイクルの59.3%および16.8%でみられました。時間通りに行えたトリガー群と比較するとトリガーが早い群は、MII卵が平均1.0個少なく、2PNが0.6個少なく、使用可能な胚盤胞が0.4個少ない結果で、トリガーが遅い群は、MII卵が平均3.6個少なく、2PNが2.7個少なく、使用可能な胚盤胞が1.3個少ない結果でした。


<まとめ>
卵巣刺激中のトリガー日を最適化するための機械学習モデルを開発した最初の研究の1つです。この結果は、サイクルの半分以上が早いまたは遅いトリガーの可能性があることを示しています。早いまたは遅いトリガー群は、胚盤胞個数の減少を認めており、トリガー日を改善させることでかなりの数の患者の転帰を改善する可能性があることを示しています。
著者らは今後の作業で、トレーニングデータセットのサイズと多様性を継続的に拡大し、モデルを使用して患者転帰を改善するための前向き検証研究を実施することに焦点を当てていくようです。

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