子宮内膜スクラッチ

着床障害は胚によるものが3分の2を、子宮内膜によるものが残りの3分の1を占めると報告されています。
ヒトの子宮内膜掻爬は、自然月経周期に子宮内膜生検を繰り返し受けたIVF女性で高い妊娠率が観察されたため、偶然の発見として最初に報告されました。これにより、134人の患者を対象に最初に発表された研究で、出生率が2倍に増加したことが示されました(48.9%対22.5%)。ただ症例やスクラッチの時期によっては妊娠率が下がる報告もあります。(採卵日に子宮内膜掻爬を行った結果、対照群と比較して着床率が約3分の2減少)


1回以上の着床障害のある女性を対象とした非盲検多施設無作為化対照試験で、子宮内膜掻爬が臨床妊娠率に及ぼす影響を調査している報告をご紹介いたします。


2019年12月 Fertility and Sterilty
”Therapeutic endometrial scratching and implantation after in vitro fertilization: a multicenter randomized controlled trial”


刺激前の高温期のday18–22に、ピペールを使用して、掻爬を実施しています。
antagonist法で採卵後2〜5日に最大2個の胚移植を行なっています。


合計304人の白人女性が含まれ、151人が子宮内膜掻爬にランダム化され、153人が対照群にランダム化されました。 合計で254人がETを行いました。
<結果>
スクラッチ群と非スクラッチ群を比較した場合、臨床妊娠率に有意差はありませんでした。(36.4%対32.7%)着床率、進行妊娠率、出生率、流産率、および多胎妊娠率に有意差はみられませんでした。


サブグループ解析では、1回、2回の着床の不成功群において、スクラッチ群と非スクラッチ群に有意差はみつかりませんでした。


しかし、3回以上の着床の不成功群では、スクラッチ後に成績が大幅に改善しました。(47.5%対27.5%)


合計87人の子供が生まれ、スクラッチ群では、3組の双子を含む50人の子供が生まれました。 妊娠合併症や性別、出生時体重、奇形/出生異常、胎盤奇形など、出生データに有意差は認められませんでした。 


<結論>
この多施設RCTは、卵巣刺激前の黄体期のスクラッチは、1回、2回の着床の不成功群の臨床妊娠率を改善させませんでした。ただし、サブグループ解析では、3回以上の着床の不成功群は、スクラッチすると臨床妊娠率が大幅に改善することが示されました。妊娠合併症や出生データに差がみられませんでした。

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