提供卵を採卵する際、排卵抑制剤はアンタゴニストとMPAどちらがよいか?

採卵を行う際、排卵すると卵を獲得できなくなる可能性が高いため、排卵しないようにLH サージを抑制させる方法があります。GnRHアンタゴニストは内因性LHサージを抑制し、GnRHアゴニストにより卵成熟を誘導することで、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクを低下させ成熟卵(MII)を回収することができます。
また、黄体より分泌されるプロゲステロンは、GnRHの拍動性分泌およびLH分泌を阻害します。メドロキシプロゲステロン17−アセテート(MPA)は、合成プロゲスチンであり、高いプロゲステロン活性および抗ゴナドトロピン作用を有します。 MPAは、卵巣刺激におけるLHサージの抑制に効果的と報告されています。MPAピークは経口投与の3時間後、半減期は24時間であります。アンタゴニストより安価であり、ARTにかかるコストを抑えられます。


今回卵子提供胚を採卵する際、排卵抑制をアンタゴニストとMPAどちらかで行った方が良いか両群を比較した報告をご紹介いたします。


2019年5月 Fertility and Sterilty
"Medroxyprogesterone acetate versus ganirelix in oocyte donation: a randomized controlled trial"


この研究では、oocyte donationにおけるガニレリックス(GnRHアンタゴニスト)とメドロキシプロゲステロンアセテート(MPA)の有効性を評価することであります。


MPA 10 mg /日とガニレリクス0.25 mg /日を1:1に分け比較する第IV相無作為化臨床試験です。
MII卵数、rFSHの総用量、卵巣刺激中のホルモン値、LHサージ、受精率、生化学妊娠率、臨床妊娠率、進行妊娠率および出生率などを2群間で比較しています。


<結果>
MPA群:86人、ガニレリクス群:87人を対象とし、GnRHaをトリガーにて採卵。
MⅡ卵数はMPAで15.1個、ガニレリクスでは14.7個と有意差がありませんでした。
刺激日数、rFSHの総量、両群変わらない結果でした。
エストラジオールピーク値は両群で有意差を認めませんでした。両群ともLH サージは抑制されていましたが、ガニレリクスの方がLHの下降が顕著でした。
受精率、初期胚の形態学的スコア、移植胚のスコア、最良好胚盤胞の割合は両群変わりませんでした。
提供卵子による胚移植を行ったところ、MPA群において臨床成績が有意に悪かった。多変量マルチレベル分析を行ったところ、因子を調整後、生化学妊娠両群に有意差はありませんでしたが、臨床妊娠:2.17倍、進行妊娠:2.13倍ガニレリクスにおいて妊娠率が高いことがわかりました。しかし、生児獲得率については両群に有意差はありませんでした。



<結論>
GnRHアゴニストトリガーを使用した提供卵を採卵する際、排卵抑制剤としてのMPAは、GnRHアンタゴニスト(ガニレリクス)を使用した場合のMII卵数は変わりませんでした。 しかし、MPA使用はガニレリクスと比較すると臨床成績に影響がでる可能性があります。

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