卵巣刺激しても胚の異数性の割合は増加しないという報告
みなさんこんにちは
本日は卵巣刺激することで染色体の異常胚が増えるか検討した報告になります。
Hum Reprod. 2018 10月
" Dosage of exogenous gonadotropins is not associated with blastocyst aneuploidy or live-birth rates in PGS cycles in Chinese women"
です。
採卵する際、注射や内服で卵巣刺激を行い採卵数を増やすことで、1回の採卵で妊娠を目指すのが世界的にもスタンダードだと思います。卵巣過剰刺激症候群など卵巣刺激の副作用を考え、内服に注射を1.2回するようなmild stimulationを行うクリニックもあります。
この卵巣刺激が、胚の染色体異常に関係するという報告や、関係しないという報告があります。染色体異常のメカニズムはすべてが解明されているわけではありませんが、大部分の染色体異常は最初の減数分裂のエラーに由来するといわれています。
この報告は、中国で着床前診断(PGA-T)を行なった1088採卵周期サイク3219個の胚生検を実施しております。 PGA-Tを実施する適応は、母親の年齢(38歳以上)、反復着床不全、再発性胎児染色体異常および反復性流産でした。
ロングプロトコール(538 周期)、ショートフロトコール(379周期)、アンタゴニストプロトコール(118 周期)および低刺激プロトコール(53 周期)の4つの刺激プロトコールを行なっております。
受精方法は全て顕微授精。
PGT-A検査法はアレイCGHで行なっています。
移植法は基本的に自然排卵周期で単一胚盤胞移植を行なっています。
FSH投与量や採卵数により分類し胚の正倍数性の割合、妊娠率などを比較検討しております。
<結果>
正倍数性の胚の総数は、アレイ-CGHを用いて遺伝学的にスクリーニングされた3219胚のうち、1690胚(52.5%)でした。
35歳以上(高齢群:2084.2±899.4IU)は、外性ゴナドトロピンの用量が35歳未満(若年群:1897.2±824.2IU)に比べて投与量が多い結果でした。同様に胚の異数性の割合は、高齢群で59.3%、若年群で39.8%しと高齢群で有意に異数性た。
この分析には、各卵巣刺激サイクルにおける最初の胚移植のみが含まれていました。683人の女性に、683個の胚を移植し、若年群436個の胚および高齢群247個の胚を移植した。全体で生化学的妊娠率は71.3%(487/683)、臨床妊娠率は57.3%(391/683)、進行妊娠率は54.5%(372/683)であり、生児獲得率は51.4%(351/683)でした。
胚盤胞の異数性率
若年群 高齢群
卵胞刺激量 1500IU未満 42.9%(321/748) 58.0%(181/312)
1500〜3000IU 36.9%(372/1009) 59.8%(471/788)
>3000IU 43.4%(86/198) 59.8%(98/164)
採卵数 1〜5個 38.9%[21/54] 63.8%[113/177]
6~10個 40.0%[189/472] 58.9%[228/387]
11~15個 41.4%[269/649] 56.6%[215 / 380]
> 15個以上 38.5%[300/780] 60.6%[194/320]
すべて有意差なし
臨床妊娠率、妊娠率、生児獲得率は、採卵数1〜5個の群が他の群と比較すると有意に低下していました。また、ロジスティック回帰分析で、女性の年齢、BMI、基礎FSHおよび卵巣刺激プロトコールを調整した後でも、生児獲得率が卵巣反応性と関連していることがわかりました。
まとめ
卵巣刺激に使用される外因性ゴナドトロピンの総用量が、中国の女性のPGT-A周期における胚盤胞の異数性または生児獲得率に関連しないことと考えられました。
卵巣の反応性と異数性の関係性は認めませんでしたが、採卵数1−5個の群は、臨床妊娠率、妊娠率、生児獲得率が低いという結果でした。
こちらの報告はアジア人のデータであり本邦でも同じ傾向があると予想されます。
この報告によると卵巣刺激が胚の異数性を増加させるとは言えないようです。
前にもご紹介した通り、採卵数が増加すれば累積妊娠率も増加するという報告があったように、副作用を抑えつつ採卵数を多くしたほうが良いように思えます。