抗甲状腺抗体と流産

こんにちは


本日は抗甲状腺抗体と正常染色体の反復する流産の関係について調べた報告をご紹介いたします。


2018年8月のFertility and Sterility
Maternal antithyroid antibodies and euploid miscarriage in women with recurrent early pregnancy loss
です。


生殖年齢のカップルの1%〜5%は、反復する流産(RPL)を経験されています。そしてそのRPLは身体的、精神的、そして感情的な障害をおこします。この論文において反復する早期流産(REPL)は、妊娠10週未満の2回以上の流産と定義されます。


トリソミー、モノソミー、倍数性および不均衡な転座などの染色体異常が、妊娠10週以内に起こる流産の50%〜70%を占めています。流産が染色体異常によるものであると判明した場合、その後の流産の可能性を高めないといわれています。


2012年の米国生殖医療学会のガイドラインによると、夫婦の転座、子宮奇形など子宮因子、抗リン脂質症候群、糖尿病、プロラクチン異常および甲状腺疾患のスクリーニングが標準的な評価としてあげられています。さらに、最近の文献では、慢性子宮内膜炎の有無を評価することも報告されています。評価後、REPLのカップルのうち60%は、1つ以上の因子がみつかると報告されています。


この中の甲状腺機能と妊娠についての報告はさまざまあります。
甲状腺機能低下症は、流産、低出生体重、早産、胎盤早期剥離、妊娠高血圧、および児の知能指数の低下のリスクが報告されています。そのため明らかな甲状腺機能低下症の女性はレボチロキシンで治療されていますが、潜在性甲状腺機能低下症の治療に対しては議論の余地があります。


抗甲状腺抗体(抗甲状腺ペルオキシダーゼ(抗TPO)および抗チログロブリン(抗TG))とREPLの関連性も明確ではありません。最近のAmerican Thyroid Association(ATA)の2017年ガイドラインによれば、散発性の流産と抗甲状腺抗体陽性に関連を報告しています。


この研究は、散発性の流産ではなくREPLにおいて、抗甲状腺抗体が正倍数性の流産と関連しているかどうかを評価しています。


<方法>
甲状腺機能正常(TSH、0.3~2.5mlU / L)または潜在性甲状腺機能低下症(TSH、> 2.5mIU / L、正常な遊離T4または遊離T4)で、抗TPOおよび/または抗Tgを測定。抗甲状腺抗体陽性は、抗TPO抗体> 4IU / mLまたは抗Tg抗体> 9IU / mLと定義。
流産時に遺伝学的分析を行なっています。


抗甲状腺抗体の有無と正倍数性流産について検討しています。 さらに、REPLの病歴を有する女性の抗甲状腺抗体の有病率を調査しています。


<結果>
348人のうちの74人が条件をみたし、抗甲状腺抗体を有する女性の有病率は17.6%(13/74)でありました。平均TSHは抗甲状腺抗体を有する群は抗体を持たない群より有意に高い結果でした。しかしながら、流産や早産などの既往は抗甲状腺抗体有無で2群間で有意差を認めませんでした。
2つのグループ間の初期流産のタイプを比較すると、抗甲状腺抗体を持っていない群と比較して、抗甲状腺抗体を有する群において、普通の流産は化学流産や着床部位不明な妊娠よりも多い傾向が認められました。


流産の染色体の結果
62の流産染色体のうち、53%(33/62)が正倍数性であり、そのうち42%(14/33)がXX 女性、58%(19/33)がXY 男性でありました。正倍数性の流産の頻度は、抗甲状腺抗体の有無による差はありませんでした。


<結論>
この研究では、甲状腺機能正常または潜在性甲状腺機能低下症を有するREPLにおいて、正倍数性の流産と抗甲状腺抗体の存在との関連性は示されませんでした。そのため、抗体検査や治療は正当化されない可能性があるということでした。

×

非ログインユーザーとして返信する